ニンジンの皮や玉ねぎの端を「もったいないな」と思いつつ、つい捨ててしまった経験はありませんか?
そんな野菜のくずを水で静かに煮出すだけで、隠れた栄養素や旨味を無駄なく活かせるのがベジブロスです。
食品ロスや食費を抑えながら、いつもの料理にやさしい深みと豊かさをプラスしてくれます。
この記事では、ベジブロスの作り方・保存方法・活用レシピ・健康効果・使う際の注意点について、初心者の方にもわかりやすくまとめました。よろしければ参考にしてみてくださいね。
ベジブロスは、ニンジンの皮・玉ねぎの外皮・ブロッコリーの芯など、普段は捨ててしまう野菜の「皮」や「ヘタ」といった部分を、弱火でじっくり煮出して作る植物性の出汁(野菜だし)です。
近年は家庭でも手軽に取り入れられるようになり、健康志向やサステナブルな暮らしに関心の高い方々から注目を集めています。
動物性食材を一切使用せず、塩分もゼロのため、ヴィーガンや減塩を意識している方にも安心して取り入れられます。
ベジブロスは「捨てる部分」を有効活用し、90〜95℃の弱火で15分ほど煮出すだけという、実は手軽に作れる野菜だしです。
通常のブイヨンや野菜出汁が可食部(食べられる部分)を長時間煮込むのに対し、ベジブロスは渋みや苦味が出にくく、ほんのりとした甘みと黄金色の美しい仕上がりが特徴です。
特別な器具は不要で、温度を90℃以下に保つことでファイトケミカル(植物由来の抗酸化成分)やミネラルが損なわれにくく、効率よく抽出されると考えられています。
また、可食部を使わないためコストを抑えることができ、100mLあたり約5kcalと低カロリーなのも嬉しいポイントです。
ベジブロスが注目されている背景には、次のような多面的なメリットがあります。
植物性かつ無塩のため、ヴィーガン・減塩食・ファスティングなど、さまざまな食事スタイルに取り入れやすく、メディアや料理研究家の間でも話題になっています。
ベジブロスはクセが少なく、和洋中を問わずさまざまな料理に活用できます。
無塩で冷凍保存も可能なため、離乳食・介護食・塩分制限が必要な食事にも安心して使えます。
また、玉ねぎの皮で琥珀色、紫玉ねぎで赤紫、ブロッコリーの芯とパセリの茎で緑色など、使う素材によって彩りのアレンジも楽しめるのが魅力です。
基本は「香りが穏やかで、安全に食べられる素材」がベジブロスに向いています。おすすめと避けたい素材を知っておくと失敗しにくくなるので、下記を参考にしてください。
普段は捨てがちな野菜くずにも、実は栄養がたっぷり。代表的な3つをご紹介します。
皮まで使うベジブロスでは、農薬やワックスの残留には十分注意が必要です。特に輸入レモンやリンゴは、収穫後の鮮度保持のためにワックスや防カビ剤が使われていることがあります。
対策として、熱湯に重曹を加えたものに30秒ほど転がすと、表面のワックスが落ちやすくなります。その後は流水でしっかり洗いましょう。
また、根菜類(にんじん・ごぼう・じゃがいもなど)も表面に農薬が残っていることがあるため、50℃程度のお湯に1分ほど浸けてから、やさしくこすり洗いするのがおすすめ。
洗った後は水気をよく拭き取り、冷凍保存しておくと便利です。
野菜くずは出るたびにジッパーバッグに入れて冷凍するのが基本。空気をしっかり抜いておくことで、酸化や冷凍焼けを防ぎ、風味を保ちやすくなります。
素材ごと、または香りの系統別にに分けて保存すると、煮出したときの味がブレにくくなります。日付を記載し、1か月以内に使い切るのが鮮度と風味を保つポイントです。
流水でよく洗った後、水分をしっかり拭き取ると冷凍時に霜がつきにくく、解凍時の水っぽさや雑味も抑えられます。
芯や茎は薄切り、葉物はざく切りにしてから凍らせることで、解凍時に細胞が壊れて煮出しやすくなるという利点もあります。
完成したブロスは粗熱をとってから冷蔵庫で保存。2〜3日以内に使い切ると風味を損なわず、安全に楽しめます。
長期保存したい場合は製氷皿で小分け冷凍を。使いたいときにサッと加えられ、1か月以内を目安に使い切ることで風味も栄養もキープできます。
材料(出来上がり約800mL)
・冷凍した野菜くず…100g
・水…1,000mL
用意する道具:厚手の鍋、温度計、アク取りシート、ザル、キッチンペーパー
作り方の手順
ベジブロスは淡い味わいでアレンジがしやすく、いつもの料理に取り入れるだけで風味に深みが出ます。単調にならないよう、いくつかの活用レシピを試してみましょう。
色付きアレンジ:玉ねぎの外皮で琥珀色、紫玉ねぎの皮で赤紫、ブロッコリーの芯+パセリの茎で緑系など、色のバリエーションも楽しめます。見た目が鮮やかなので、子どもの食育にもおすすめです。
ベジブロスには、野菜の皮や芯に含まれる栄養素がじっくり溶け出します。たとえば、玉ねぎの外皮に含まれるケルセチン(抗酸化・抗炎症が注目される成分)、トマトのリコピン(紫外線による酸化ダメージへの対応が期待される成分)、とうもろこしの芯のフェルラ酸(ポリフェノールの一種で血流や巡りをサポートするとされる成分)が代表的です。
加熱することで細胞壁が壊れ、生で食べるよりも栄養素の吸収率が高まるとされます。カリウムはむくみの軽減に役立ち、クロロフィルは腸内環境を整えることで、肌荒れや便秘ケアにも役立つといわれています。
また、低カロリーなため、ファスティング中のミネラル補給にも適しています。
ヨーロッパの一部報告では、玉ねぎの皮を使ったベジブロスを1日200mL、4週間継続して飲んだグループで、炎症マーカーが平均12%低下したというデータもあります※。
こうした科学的根拠はまだ限られているものの、さまざまなファイトケミカルを一度に摂取することで、相乗的な健康効果が期待されています。
ベジブロスは、日々の台所から出る野菜くずを活かして、手軽に栄養とおいしさをプラスできるやさしい出汁です。
健康や環境への配慮、食費の節約、そして食材を無駄にしない心地よさ——どれも無理なく始められるのが魅力です。
まずは冷凍保存から始めて、味噌汁やスープに加えてみるだけでも、きっと毎日の料理が少し楽しくなるはず。
今日から、ベジブロスのある暮らしをぜひ取り入れてみてくださいね。
この記事を書いた専門家(アドバイザー)
はなうたツバメ 編集室